第十図 入鄽垂手
[序]
柴門獨り掩て、千聖も知らず。
自己の風光を埋めて、前賢の途轍に負く。
瓢を提えて市に入り、杖を策いて家に還る。
酒肆魚行、化して成仏せしむ。
【現代語訳】
柴の戸はひっそりと閉ざされ、いかなる聖者もその内側を伺うことは出来ない。
悟った様子もまるで見えなくて、祖師方の歩まれたレールからも外れて自分自身の道を歩んでいく。
徳利をひっさげて町へ行き、杖をついて家に帰る。
居酒屋や魚やにも自由に出入りして人々に触れ合い、出会う人もまた感化され仏になっていくのだ。
[頌]
胸をあらわし足を跣にして鄽に入り来る。
土を抹し灰を塗って笑い腮に満つ。
神仙真祕の訣を用いず。
直に枯木をして花を放って開かしむ。
【現代語訳】
胸ははだけ、裸足のままで町へ行く。
泥だらけで灰にまみれても、満面の笑みである。
特別な神通力をひけらかす必要も無い。
その人がいれば枯れ木も蘇って花を咲かせるのである。
手はたれて足はそらなるおとこやま かれたる枝に鳥やすむらん
身をおもう身をば心ぞくるしむる あるに任せて有るぞあるべき